インボイス制度が開始され、多くの事業者がインボイス請求書や領収書の保存が必要となっていることと思います。今回はインボイスの保存が不要で一定の帳簿の記載のみでいいとされている出張旅費特例について書いていきます。
出張旅費とは?
そもそも経費として認められる出張旅費とは何でしょうか。出張旅費とは、会社が従業員の業務に必要な出張に対して支給する旅費、宿泊費、日当などのうち、「通常必要である」と認められるものをいいます。この「通常必要である」と認められるためには、所得税法上で「非課税となる旅費」に当てはまることが必要となります。
出張旅費が給与課税とならずに、旅費交通費などの非課税で処理するためには、以下の2つの事項を勘案し、出張の目的、目的地、行路や期間の長短、宿泊の要否、旅行者の職務内容及び地位等などから総合的に判断するものとされています。
- 出張の金額が、役員及び使用人の全てを通じて、適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか。
- 出張の金額が、同業種、同規模の他の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか。
まずは、自社で行われている出張旅費精算が通常必要な範囲として認めらるかどうか、出張旅費規程がある場合は、規定の内容通りに精算処理が行われているかを確認しましょう。
出張精算は電車料金やバス料金などの公共交通機関だけではない
出張精算は、その工程や内容に応じて、電車やバスなどの公共交通機関のほか、航空券代、レンタカー代、タクシー代なども精算されることがあります。そのため、通常であればインボイスが必要な飛行機代、レンタカー代、タクシー代なども、出張精算ということであれば、支払先がインボイス事業者かどうかにかかわらず、インボイスの保存が不要で帳簿のみの記載にて仕入税額控除をすることができます。ただし、法人が宿泊代や飛行機代などを直接支払った場合や法人のクレジットカードで決済した場合は、インボイスが必要となってきます。なお、法人が電車代やバス代などの公共交通機関に対して直接支払った場合は、公共交通機関特例があり、1つの領収書の単位が税込3万円未満であれば、インボイスの保存が不要となり、帳簿のみの記載にて仕入税額控除をすることができます。
また、上記の出張旅費特例や公共交通機関特例にかかわらず、基準期間(法人は原則として前々事業年度)における課税売上高が1億円以下又は特定期間(法人は原則としてその事業年度の前事業年度開始の日以後6月の期間)の課税売上高が5千万円以下の場合、令和5年10月1日から6年間は税込1万円については帳簿のみの保存で仕入税額控除の適用を受けることができます。
帳簿は何を記載する?
この出張旅費特例はインボイスの保存が不要で、一定の帳簿のみの保存となります。帳簿の記載事項は、以下の通りです。
- 相手方の氏名や名称
- 課税仕入れを行った年月日
- 課税仕入れに係る資産又は役務の内容(軽減対象税率であればその旨)
- 支払対価の額
- 出張旅費特例である旨
おわりに
インボイス制度をきっかけに出張旅費規程がない法人はこの特例を使うために作成をしたり、既に出張旅費規程がある法人は内容の見直しをすることや営業社員に周知をしていくようにしましょう。