税抜経理を採用するメリット

消費税の納税義務がある個人事業主や法人は、その会計処理について税抜経理方式または税込経理方式のどちらを選んでも構わないこととなっています。今回は税抜経理を採用することによるメリットを書いていきます。

税抜経理と税込経理って?

税抜経理方式は、売上や仕入を税抜金額で会計処理していく方式です。売上の消費税額を仮受消費税等で計上し、仕入や外注、経費の消費税額を仮払消費税等で計上する方法です。損益計算書には全て税抜で表示されることになります。

一方税込経理方式による場合は、売上や仕入を税込金額で会計処理していく方式です。売上の消費税額は売上金額、仕入や外注費、経費などの消費税額は仕入金額などに含めて計上する方法です。消費税の納付税額は、申告時か決算時に租税公課として費用計上することになります。

なお、消費税の納税義務が免除されている免税事業者は、税込経理でしか処理できません。そのため、設立2期目まで免税事業者でそのままの流れで税込経理で会計処理をしていることも多いかと思います。

税抜経理を採用するメリット

税抜経理を採用することによるメリットは以下の通りです。

①損益や納税額を把握しやすい

税込経理の場合、売上や仕入などは消費税を含めた金額で損益計算書に記載されます。そして、決算時に消費税の納税額の計算をして租税公課として費用計上するため、決算時に大きく損益が変動することになります。毎月消費税の予測をして概算計上をすればいいのですが、そもそも税抜経理であれば税抜金額で売上や仕入が計上されるため、期中でも損益が把握しやすいことがあげられます。また、納税額も仮受消費税から仮払消費税の金額を差し引くことで、消費税の納税予測もすぐにすることができます。

②固定資産の判定が税抜

固定資産の購入にあたって、1個当たりの購入金額が10万円以上であれば固定資産として計上をすることになります。この10万円の判定は、税込経理であれば税込で10万円、税抜経理であれば税抜で10万円(税込換算だと11万円)で判定をしていくことになりますので、税抜経理のほうが有利となります。また、青色申告で資本金1億円以下の中小企業は、1個当たり30万円未満の固定資産であれば年300万円まで一括費用処理をすることができます。そのため、税抜経理を選択していれば税込で33万円まではこの特例を使うことができます。

③償却資産税で計算されるもととなる金額が税抜

上記の固定資産と関連して、建物や車両以外の固定資産を所有していて、一定額を超えると償却資産税がかかってきます。税抜経理であれば、税抜が本体価額となりますので、償却資産税の課税が抑えられることになります。

③交際費の接待飲食費の判定が税抜

接待飲食費で1人当たり5,000円以下であれば、税法上は交際費の金額に含めなくてもいいこととされています。この5,000円の判定も税込経理であれば税込で5,000円、税抜経理であれば税抜で5,000円(税込換算だと5,500円)で判定をしていくことになりますので、税抜経理のほうが有利となります。

インボイス後は免税事業者から仕入れた場合の会計処理に注意

税抜経理を選択している事業者で、インボイス登録をしていない免税事業者から仕入れた場合の会計処理には注意が必要です。免税事業者からの仕入で仕入税額控除が出来ない部分は、対価の額に含めることとされているためです。免税事業者等から仕入れた場合、支払った消費税のうち令和8年9月30日までは20%、令和11年9月30日までは50%、それ以降は全額が仕入税額控除をすることができません。その仕入税額控除が出来ない部分の金額については、本体価額に含めて処理をすることになります。

例えば、令和8年9月30日までに免税事業者から税込みで11万円の備品を購入した時の仕訳は以下の通りとなります。

工具器具備品 102,000 / 現金 110,000

           仮払消費税   8,000 /

支払った消費税10,000円のうち、仕入税額控除ができない20%の2,000円を工具器具備品の本体価額に含めて処理をすることになります。そのため、固定資産の10万円判定にも影響が出てくることになります。

おわりに

何気なく税込経理を選んでいる事業者の方も多いのではないでしょうか。税抜経理も多くのメリットがありますので税抜経理にすることによる影響を確認した上で、一度検討してみてはいかがでしょうか。