【インボイス要件緩和】振込手数料や入出金手数料について

インボイス制度が開始され、まもなく半年が経過しようとしています。インボイス制度へ対応するために、請求書などの書類の整備や保管などで業務量が増えている事業者の方も多いのではないでしょうか。また、日常業務の中でどう対応していけばいいか疑問が出てくることもあるかと思います。国税庁ではインボイス制度のよくあるお問い合わせについて、ランキング形式でその回答を公表しています。(出典:国税庁ホームページ 0521-1334-faq.pdf (nta.go.jp))今回は、そのよくあるお問い合わせのうち、比較的最近の令和6年2月29日に更新があった「金融機関での振込手数料や入出金手数料」の取り扱いについて書いていきます。

通帳or入出金明細と任意の1回の振込のインボイス請求書の保存で認められるようになりました

金融機関を通じて振込をする場合には、通常振込手数料がかかります。振込手数料も金額は大きくないのですが、原則としては全ての振込手数料について、金融機関からのインボイス請求書を保管する必要がありました。ただし、日常的に振込や入出金が多い事業者にとっては、1回ごとの振込や入出金について、わざわざその都度インボイス請求書を取得し保管するのは相当の業務負担がかかってしまいます。そこで国税庁より要件緩和の公表があり、次の要件を満たせば、全ての振込手数料や入出金手数料についてはインボイス請求書の取得と保管が不要となっています。

  • 通帳か入出金明細の保管
  • 金融機関ごとに任意の1回分の振込についてのインボイス請求書の保管

つまり、銀行ごとに過去に振り込みをした時のどれか1回分の振込手数料について、インボイス請求書を保管すれば、他の振込手数料も同様に仕入税額控除を受けることができることになりました。似たような例としてクレジットカードを利用したETC料金の特例があります。こちらもすべてのETCの利用証明書を取得するのではなく、利用した高速道路ごとに1回分の利用証明書を取得し、クレジットカードの明細とあわせて保管をしておくことで、仕入税額控除が認められるものになります。

まずは少額特例を適用できる確認

上記の対応をする前に、まずは少額特例を適用できるかどうか確認しましょう。

少額特例とは、基準期間(法人は前々事業年度、個人事業主は前々年)の売上高が1億円以下である事業者について、国内での仕入れの1回あたりの金額が1万円未満である場合には、帳簿のみの保存により、仕入税額控除の適用を受けることができる特例になります。期限は令和11年9月30日までの仕入が対象となります。

まずは自社がこの少額特例が適用できる事業者かどうか確認し、少額特例が適用できるのであれば上記の振込手数料やETCについてのインボイス請求書の取得や保管をしなくても仕入税額控除が受けられることになります。ただし、そもそもとして法人や個人事業主で経費にするためには、その金額の根拠となる資料の保管が必要ですのでご注意ください。

おわりに

事業者ごとのそれぞれの事情によって、インボイス制度へどう対応していくかが違ってきます。まずは自社の現状を確認し、特例や要件緩和など使えるものがないか確認をし、やるべきこととやらなくてもいいことの把握をしていきましょう。