【法人設立初年度】決算申告のポイント

桜も開花し始め、3月も終わりが近づいてまりました。法人の決算月で一番多いのは3月です。昨年に会社を設立し、3月決算としている方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回は、設立1期目の法人決算のポイントを6点書いていきます。

【ポイント1】創立費・開業費を漏れなく計上しましょう

法人を設立する前に支出したものであっても、設立のためにかかった費用であれば創立費や開業費として計上することが出来ます。例えば、以下の支出が該当します。

  • 法人設立のための登録免許税
  • 法人設立のための印紙代
  • 法人で使う印鑑などの購入代
  • 司法書士などに支払う設立登記手数料
  • 定款を作成するための費用
  • 法人を設立するまでの事務所家賃など

この創立費や開業費ですが、設立1期目に費用として計上する方法と繰延資産として資産に計上する方法の2パターンがあります。繰延資産として資産に計上した場合は、いつの事業年度でも好きな金額を費用化することができます(任意償却といいます)。そのため、黒字になった事業年度で費用化することで、その事業年度の税金負担を減らす効果があります。

まずは、設立前に支出したものを確認し漏れないようにしましょう。

【ポイント2】決算が赤字でも税金がかかります

個人事業で赤字の場合は所得税はゼロ円ですが、法人の場合は赤字でもかかる税金があります。それは、地方に支払う均等割といわれているものです。例えば、私が在住している埼玉県富士見市で、資本金1千万以下・従業員50人以下の会社を設立した場合は、決算が赤字でも埼玉県に法人県民税として2万円、富士見市に法人市民税として5万円の計7万円が毎年かかってくることになります。ただし、設立1期目に関しては設立から決算までの月割りで計算をすることになります。

【ポイント3】少額減価償却資産の限度額300万円に注意しましょう

資本金1億円以下の中小企業の場合、青色申告の特典として「取得価額が30万円未満の固定資産を購入し、使い始めた場合は、年300万円まではその事業年度に費用にできる」という特例があります。この年300万円までという上限ですが、設立1期目は設立月から決算月までの月割りとなりますので、超えてしまうことがないように注意が必要です。例えば、令和5年7月に設立、令和6年3月決算の場合は、事業年度は9か月となりますので、1期目の上限は225万円(300万円÷12か月×9か月)となります。

【ポイント4】交際費の800万円ラインに注意しましょう

資本金1億円以下の中小企業の場合は、交際費も800万円までは費用に計上できます。この800万円のラインについても、設立1期目は設立月から決算月までの月割りとなりますので、超えてしまうことがないように注意が必要です。

【ポイント5】3期目に消費税の課税事業者になるか確認しましょう

設立1期目よりインボイス事業者の場合は最初から課税事業者となりますが、インボイス事業者でない場合は、1期目の課税売上高で3期目以降に課税事業者となるかどうかが決まります。この場合の1期目の課税売上高ですが、1年に換算した売上高となります。仮に1期目が9か月だとしたら、売上を12か月分に換算した売上高が1,000万円を超えるかどうかの判定となりますので、設立1期目の売上高を確認するようにしましょう。

【ポイント6】2期目の役員報酬を決めましょう

役員報酬については利益操作を防ぐために一定のルールがあります。主に、①毎月の役員報酬を定額にしないといけない定期同額給与と②事前確定届出給与(賞与)となります。①定期同額給与は期首から3か月以内に報酬額を決定する必要があります。また、②事前確定届出給与は株主総会から1か月か期首から4か月のどちらか早い日までに税務署に届出をする必要があります。そのため、設立1期目の決算のタイミングで2期目の役員報酬も検討が必要となります。

おわりに

設立1期目の決算申告のポイントを書きました。1期目の決算書を作る過程で数字を見ることで、今まで見えていなかった課題が見つかってくると思います。無事に決算申告を終わらせて、2期目以降につながるような機会にしていきましょう。