長く勤務している社員に対して、表彰という形で記念品や旅行券を支給しているケースも多いのではないでしょうか。今回は永年勤続表彰にて思わぬ給与課税がされないためのポイントを書いていきます。
給与課税しなくてもいい要件
原則として、社員に対して給与以外に品物や金券などを渡すと社員への経済的利益として現物給与となり、給与として課税することになります。ただし、要件を満たせば経済的利益とみなされずに給与課税しなくていいものとして永年勤続表彰があげられています。永年勤続表彰が給与課税されないためには、
①対象者(誰に)
②何を表彰として支給するのか
が大事なポイントとなります。
まずは、①対象者についてです。対象者は「勤続年数がおおむね10年以上である人」が対象とされています。また、同じ人を2回以上表彰する場合には、前に表彰したときからおおむね5年以上の間隔があいていることが必要です。10年以上在籍した社員が対象者となり、少なくとも5年の間隔をあけて、その後に20年表彰や30年表彰といった具合で、表彰をしていくことになります。
次に②何を支給するのかについてです。所得税の基本通達では、旅行、観劇等への招待や記念品の支給で社会通念上相当な金額の範囲内であれば、給与課税しなくても差し支えないこととされています。そのため、記念品の代わりに現金として支給したり、現金と同様に換金性の高い商品券や金券の支給、社員が自由に選択できるカタログギフトなどを支給した場合は、給与課税となりますので、注意が必要です。ただし、旅行券を支給する場合は、条件を満たせば給与課税しなくてもいいこととなっています。
旅行券を永年勤続表彰として支給する場合
旅行券は商品券や金券と同様に換金性もあるため、原則として給与等として課税されます。ただし、永年勤続表彰として、次の要件を満たしている場合は給与課税しなくてもいいこととなっています。
(1) 旅行の実施が、旅行券の支給後1年以内にされること。
(2) 旅行の範囲は、支給した旅行券の額からみて相当なもの(海外旅行を含む。)であること。
(3) 旅行券の支給を受けた者が当該旅行券を使用して旅行を実施した場合には、所定の報告書に必要事項(旅行実施者の所属・氏名・旅行日・旅行先・旅行社等への支払額等)を記載し、これに旅行先等を確認できる資料を添付して会社に提出すること。
(4) 旅行券の支給を受けた者が当該旅行券の支給後1年以内に旅行券の全部または一部を使用しなかった場合には、その使用しなかった旅行券は会社に返還すること。
新型コロナで旅行が1年以内に実施・報告できそうにないときは?
新型コロナウィルスの影響により、緊急事態宣言などによる外出自粛などで1年以内に旅行の実施が出来そうにないときもあります。その時は会社が1年以内の旅行実施の延長を認めて、その後に旅行券を受けた社員が旅行をし、要件通りに報告書を会社に提出すれば、特に問題ないこととされています。
おわりに
社員のために支給や表彰をしたことで思わぬ給与課税を受けないように、表彰する前に要件を満たすかどうかしっかりと確認をするようにしましょう。