法人で社用車を購入する際に、4年落ちの中古車を購入するといいという話を聞いた方もいるのではないでしょうか。今回は中古資産を購入した場合の会計処理について書いていきます。
固定資産の購入は購入年度に一括で費用処理ができない
10万円以上の資産を購入した場合、まずは「固定資産」として計上します。そして固定資産の種類によって定められた耐用年数で複数年にわたって、「減価償却費」として費用処理をしていきます。
例:期首に社用車として普通車の新車を500万円で購入し、使い始めた場合
普通車の耐用年数は6年となります。減価償却方法の届出を事前に税務署にしていない場合は、定率法と呼ばれる償却方法で減価償却をしていくことになります。6年の定率法の償却率は0.333となりますので、初年度の減価償却費は
5,000,000円×0.333=1,665,000円
となります。上記の計算は期首に購入し使い始めた場合ですので、期中に取得した場合は、決算月までの月数按分となります。
また、中小企業の場合は固定資産の取得価額が30万円未満の購入の場合は、年300万までは一括で費用処理できるという特例もあります。(No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例|国税庁 (nta.go.jp))
中古資産は耐用年数を短くできる特例がある
新品ではなく中古資産の購入の場合、使用可能期間の見積りが困難なときは、簡便法により算定した年数を耐用年数として処理できる特例があります。
簡便法による耐用年数は次のように計算します。
・法定耐用年数の全部を経過した資産
→法定耐用年数×20%
・法定耐用年数の一部を経過した資産
→(法定耐用年数-経過した年数)+経過年数×20%
なお、上記の計算で1年未満の端数があるときは、その端数を切り捨て、その年数が2年に満たない場合には2年となります。
例:期首に中古車で4年落ちの普通車を500万円で購入し、期首から使い始めた場合
普通車の法定耐用年数6年のうち4年が経過しているので、法定耐用年数の一部を経過した資産として計算をすることになります。耐用年数の計算方法は次の通りです。
(6年-4年)+4年×20%=2.8年→2年(1年未満切捨)
定率法の耐用年数2年の償却率は1.000です。
そのため、初年度の減価償却費は、
5,000,000円×1.000=5,000,000円
となり、残存価額1円を残した4,999,999円が初年度の減価償却費として計上することが出来ます。
そのため、4年落ちの車を購入することで、購入した年に多くの減価償却費を計上することができるため、購入年の会社の利益を減らすことが出来ます。
ただし、中古資産の購入価額がその中古資産の再取得価額(中古資産と同じ新品のものを取得する場合のその取得価額)の50%を超える場合には、この簡便法による耐用年数の算定をすることはできず、法定耐用年数を適用することになります。
中古資産を購入した時の注意点
減価償却費の計上は、購入するだけでなく、事業に供した月(使い始めた月)から費用計上をすることになります。そのため、上記の4年落ちの中古車のように、1年で購入額の全額が費用計上できる計算でも、決算月までの月数按分となります。例えば、最後の決算月に購入し使い始めても、1か月分しか減価償却費を計上することができませんので、注意が必要です。
また、初年度に多額の減価償却費を計上して簿価が1円になった場合、人気車で中古市場の価額が落ちない場合は、売却した時にその簿価1円との差額が全額売却益となりますので、法人の利益となりますので、税金負担が増えることになります。
おわりに
中古資産の購入は耐用年数を短くでき、減価償却費を多く計上できるメリットもありますが、その分購入によるキャッシュも流出しますので、過度な買い替えはキャッシュフローを悪くする原因となります。資金繰り計画を検討したうえで、購入を検討するようにしましょう。